アクセスカウンタ

天国への階段

プロフィール

ブログ名
天国への階段
ブログ紹介
心が渇いてました
もう・・どれほど時間が過ぎてしまったのでしょうか
帰り道、密林を抜けると正面の西の空が気になりました・・・暗い雲が割れ、太陽の周囲だけ青空が・・・
雲を払いのけ眩いばかりの光が差し込み「天国への階段」が地上に架かっていました
help リーダーに追加 RSS

THE RIVER 02

2008/09/08 01:11
画像



THE RIVER 02




ざわめく車と人通りの耳障りなノイズから逃れるように地下に潜ったところに、その喫茶店はあった。

30年もの間、ここだけが時代から取り残されてしまった。

いや、気まぐれな時代のご機嫌を取って付き合うことなく植物のように存在していた。

高校のころ、インドっぽいインテリアと香りのこの空間が好きで、モカかキリマンジェロを注文し、一枚の天然木に置かれていたマニアックな本をこの場所で読んでいた。


あの頃と同じように、お気に入りの隅っこの隠れたテーブルに決めてキリマンジェロを注文してみた。

カップも変わっていない、あの時のままだった。

まさか・・・あの頃、この店にいた、KEIKOさんまで現われるのではないかと期待したが・・・さすがに出てこなかった。


あれからもう30年も過ぎてしまっている。

振り返ると、あの頃は馬鹿だった・・

毎晩のように街をゆらゆらと漂い、アルコールの海でなにかを探していたのだが・・

あの頃、必死で探していたものは、今、慌てて取り掛かっている「この世の卒業研究」のテーマ、「光と影」に違いなかったが、生を主に仕切っていた肉体の呪縛にどっぷりと浸かり、ついに中途半端なまま投げ出したのだった。


「あれでよかったのかもしれない・・」



同じテーマを卒業研究にしている彼女は、僕の横に座りマンデリンを頼んだ。

(光と影って、研究すればするほど難しいね?)

もうすぐ50になるというのに、ジーンズが似合う彼女の時折見せる表情は、30代の前半に観えることがあった。


「光の強度(ヴァルール)の違いによって、きっと人はイリュージョンのきっかけをつかむことができる。」

「イリュージョンは、光の織りなす明暗のさまざまな音色に写し変えられて、初めて完全といえるようになる。」

(イリュージョン?幻影、幻想、錯覚かしら?)

「今見えているものが幻影だってありえるよ。イリュージョンの前で、やっと、光はその本質を観せようとする。」


「個々の色調は、その隣接色のはたらきによってだけでなく、さらにその補色のはたらきによって共鳴をえる。」

(人間にも当てはまりそうね・・)


「ひとつの色彩は、相対的に固有の存在でしかない。最も強い赤色を同じタッチで三つ書いて、最初のを黒色で次のを灰色で、最後のを白色で取り囲んでみれば理解できるさ。いいかい、描いてみるよ。」

「この赤色と並んでおかれたあらゆる色は、単体で独立して存在してた時の色から一層変わった色のように観えはじめるだろ?これは隣接色に対しているため同じ赤色という個体が、環境によって全く趣の違った別の赤色になってしまうわけさ。」

(そういう見方で観ると、そうね・・同じ赤色じゃないわ、別人みたい)


「青色の色合いについて理解を得るには、大空を眺めるといいよ。」

「まず天球の頂を観てごらん。紫がかった青・・・ウルトラマリン」

「その頂と地平線の間、45度のあたりが本来の青・・・コバルト・ブルー」

「で、地平線の近くに観える緑がかった青が・・・プルシアン・ブルー」


(色を、ただ一つの色って観ないことね?)

(人それぞれが、この世でたった一つの存在であるように)

「人生色々、人も色々、色も色々ってことさ、置かれた環境で意識しなくっても自然に変わってしまう。その織りなす綾を創り出しているのが光と影・・」


(じゃあ、自分だけの力では美しい綾を創りだせないってこと?)

「創り出せない、人の力では光は出せない、光を授かって更に環境の力で美しい綾が初めて出せる。」

(環境イコールこの世での人の縁になるわね?)

「それと、自分の綾にふさわしい光を得られるような場所を選ぶことだね。」

(・・・で、光は誰が与えるの?)


「それが、むつかしい・・?そのための卒業研究だろ?」



つづく



よろしければ、あなたの光でポチっとお願いします。


にほんブログ村 小説ブログ ドキュメンタリー小説へ







記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


A Stone

2008/09/05 00:38
画像



A Stone



「小さい頃、犬か猫飼ってた?」

(犬が好きで親に頼み込んで飼ってた。でも死んじゃった。)

(泣いて、お墓をつくって・・あれ以来動物は飼っていないわ。)


「人間は愛情の対象を、小さな生き物に最初向けるらしいね。」

「自分より小さいもの、それから柔らかいものから硬いものに、そして人間に移り、人間関係に苦労して少し疲れた頃には、人間より硬いもの、例えば盆栽とか、花や木に愛情を注ぎ込むらしい」


(誰が言ったの?)


「昔、仕事で知り合った石名人・・九州の変なおじさんだった。」

「こんなことを言っていた・・」



『[君!盆栽なんて木が主役じゃない。』

「え?どういうことですか?」

『石だよ!』

『わしは毎日、石を眺める。』


『その表情の美しさを理解するには人生の修羅場をくぐった人間でないと難しいだろうな・・』

『遙かなる悠久の時と、宇宙スケールのエネルギーによって生まれた石は、二つとして同じ顔は持たない唯一無二の存在だ。』

『宇宙が作り出した絶妙な配色や模様、そして造形美』

『それはまさに人知を越えた至高の芸術の領域にある逸品。』

『その生命は人類の時の流れをはるかに超越した次元にある。』

 
「ちょっと・・・大げさじゃないですか?」


『何が大げさなものか!』

『人類が進化した後は、その色や形の神秘性から神話や伝承に深く関わり、医療やおまじない、魔術などに広く用いられてきておる。』


『君、パワーストーンって聞いたことがあるだろう?』

『石には不思議なエネルギーがある・・』

『月の光にあてたりして浄化を行うと、よりその力が強まるとされておる。』


『次元を下げて話を戻そうか。』

『つまり、花木なんて子供のおもちゃだ。ましてや、ペットなんて!』

『やわらかいものはいかん!』

『石でも、太平洋の荒波を前線で受け止めている現役の石が素晴らしい。』

『君?その荒波で磨かれた現役の石を、ちょうど猿の頭程度の大きさで、先端部を切り取ってわしにくれないか?2,3百万の値打ちはあると見た。』

『君ならできる!』

「え!嫌ですよ!岩礁破砕は法律で禁じられています。捕まってしまいますよ!」

『解っておる。だから君に頼んでいるのだ。』

『金じゃない!欲しくて堪らんのじゃよ・・』

「ダメです・・そんなに欲しければ自分で切り取ってくださいよ!」


『どうしてもだめか。石は猿の頭くらいのものが最も高く取引される。』

『あの流星だって、それくらいの大きさだって誰かが言っていた。』

『君!石はいいぞ、絶対逃げないし裏切らない。』

『表情や仕草は堂々たる大人の振る舞いだ。わがままな所が微塵も無い。』

『それに、何一つ求めようとしない。』


『わしは生まれて今まで、人波にやわらかいものから順に愛情を注いできた。』

『動物から人に、そして花木に情をかけてきた。』

『わしの究極の愛情の対象は、お石様だ!』

『これを超えるものは、おそらく・・この世に存在しない。』



「で、話はおわり。」

(馬鹿みたい、このおじさん。でも、石って・・勝手に拾って帰ったら怒られた。)

「魂が入っているからだろ?」

「千年も万年も生きているからね。様々な怨念や想いが封印されているのかも?」

(そう考えると・・・不思議な存在だね?)





ついでに、One Clickくださいよ〜

にほんブログ村 小説ブログ ドキュメンタリー小説へ


記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


天国への階段 05 -抜けるなら今のうち-

2008/09/02 02:21
画像




天国への階段 05 -抜けるなら今のうち- 



寂れた港町の外れにある、窓が無く中二階付きのだだっ広い

オンボロ倉庫が会社の事務所


トイレは無く、雨の日は笠を、いや傘をさして100mほど離れた港のターミナルか

公園のトイレまで用を足しに行く不便さ


ただ小便の時は、面倒なので空気を取り入れるためにぶち空けた

コンクリートの壁の隙間から放尿する


薄暗く死角になっている中二階のその場所から

着水地点まで数メートルあるため

その液体が地面に落下する音と新鮮な野生の感覚を味わえる


(Blueさん、この過酷な事務所は日本でワースト10に確実に入りますよね?)

Sは愛用のパーラメントライトの煙を漂わせながらBlueにたずねた


Blueは愛用のS・Hopeの紫煙を吹きかけながら

「いや、下には下がいるものさ、まだまだいける


消防はしご車でも入り口からすんなり入れる事務所は日本にそうないさ

ぜいたく言うな、軌道に乗るまでは我慢だね」


事務所を、そこに決めた一番の理由、それは広さの割には格別に安い賃料

広いということは単純に気持ちのいいもので

スピーカーの音量を上げ、ロックをガンガン流しても倉庫街で周りに民家がないせいか

苦情が出ることはなかった

それはBlueが最も気に入っている理由の一つだった


事務所の唯一の財産は、畳3畳くらいの大きな世界地図だけ

それを眺めながら、貧しいながらも

みんなでビジネスの展開を考えて

うまくいったときは赤いピンを差し込んで赤ワインを開ける


4箇所ほど、差し込む手前までいっているものの

現実はきびしくて黄色いピンのまま


赤道を挟み南の拠点に急きょ設立した、もう一つの会社では

肌の色が白い異人も加わって同志が貧しさに堪えながらも凌いでいるから頑張れるさ


亜熱帯の気だるい空気が横たわっている

エアコンなど無く、扇風機を回し猛暑の日は

下着になり足をバケツに突っ込みながら

高温で壊れそうなパソコンのキーを叩く


埋もれて隠されていた、秘宝である特許技術の実用化にすべてを賭けて

おろかな夢ではありますが、それに全員が賭けていた


「S君!君も馬鹿だな?せっかく大企業に入社したのに

これから出世していくところなのに

なぜ?そこを辞めて俺たちと一緒にいるのさ?」


(ちょうど辞めようと思っていたところでした

仕事をしていても、同僚と飲み歩いても

出るのはそこにいない人や会社の愚痴ばかり

なんて言うか、ちっとも面白くないんです)


「みんなそうだよ、仕方なく働く場合だってあるのさ、生きていくために・・・」

(それが、今はなぜか、とっても楽しいのです

自分でも不思議なんですが、わくわくするのです

子供の頃、夢中で遊んでいた時のあの感覚


これって仕事なんですよね?

みんな一緒になって一つの目的のためにドタバタしているのが楽しくて、それが可笑しくて)


「給料も貰ってないのにか?お前、いい男なのに・・まさかアレじゃないだろうな?」


(ち、違いますよ!)


「安心したよ、でも、面白いばかりでは生きていけないよ?

生活は大丈夫か?

給料は出世払いだぜ?いいのか?」


(退職金でなんとかなります。1年間は大丈夫です)


「お前も賢そうで、結構、馬鹿だな・・・」

「ホテル代は出せないから俺の家で、しばらく居候しなよ」


「S君よ!うちの会社は死ぬまで雇用だ。定年はない。」

「企業は理念が大事だ。理念は理解したか?」

(・・はい)


「日本は美学、企業で言えば終身雇用を捨ててから、おかしくなってしまったよ。」

「リストラって横文字を使えば日本国民総服従さ


大昔、黒船が来た時のように観念してしまう

みんながリストラなら我慢しよう

根っからの農耕民族さ


「この会社は、理念、美学、仁義が大事だ!裏切りは絶対許さないぞ!」

「もし、裏切ったら、全員で会社の事業をストップしてでも君の人生を必ずつぶす」


(・・・わ、わかりました。)


「抜けるなら今のうちだぞ!なーんちゃってね?」

(・・・・・・?)

もう一人の男Tは、もう直ぐ30歳になるというのに会社勤めの経験もなく

バイトの経験が少しばかりあるだけでニートのような状況下にあり

知人に頼まれて仕方なく身元を引き受けてから半年になっていた


最初、緊張気味で表情もなく暗かった彼も

我々のキャラに溶け込み今では、呼ぶと笑顔で犬のように挨拶

何でも言うことを聞くようになったのだった


もちろん給料は出世払いで、

昼食一食の面倒と、たまに気が向いたとき飲みに誘っておごってはいるが

ある日、そのポチが犬のポチを連れてきた

生まれたばかりの雑種の子犬


(Aさん、あのぅ・・・犬を事務所に連れて来てもいいですか?)

(2週間だけ、親に引き取ってもらうまでの間だけでいいのです。お願いします)

「バ〜カ、ポチがポチを飼ってどうするんだ!

人間の女性をあきらめて犬にするつもりか?

犬に慰められてどうするんだよ!」

「ところで、メスか?」

(それが・・・残念ながら・・・オスなんです)

(でもとっても可愛いんですよ!

メスだったら本当にやばかったですよ!)


「お前は本当に馬鹿だなぁ、

仕方ない、顔と性格のいい犬なら考えようか?

連れて来てみなよ」


(これです。)

生まれて間もない茶色と黒の雑種の子犬をTは自慢げに見せるのだった

「かわいい〜い、ポチ、ポチを飼ってもイイよ

・・・でもきれいに掃除だけはしろよな!」


「お前たち、抜けるなら今のうちだぞ!」

これから先、こいつらと幾度となく地獄を味わうだろう

果たして、天国への階段は用意されているのだろうか

BlueはShort Hopeの文字を眺めながらつぶやいた


短い希望か・・・・


2006 Summer



つづく



ポチっと・・・・快感  お願いします♪
    ↓

にほんブログ村 小説ブログ ドキュメンタリー小説へ


記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


THE RIVER 01

2008/08/31 00:56
画像






THE RIVER 01


(例のこの世での卒業研究は順調に進んでいるの?)

彼女は4気筒からドドドと地響いていたHONDAのエンジンを切り

ハンドルに両腕をかけ覗き込むように聞いた

スレンダーな体は日常を時間に追われ激しく動いていることや

自分のためにだけ使える時間が少なく、決して退屈していないことを証明している

「まだまだ途中さ、原級留置になるかもしれない」


ぼくは、軽い気持ちで、ものの弾みでテーマを決めてしまい

その大変さに、大慌てで夢中になって時間に追われ取り組んではいるものの

生まれながらの、ボケーとした性分から

時々怠けては反省し

どうにか卒研を進めてはいる


彼女とは、人生の折り返し地点で偶然に出会い

ここまで続いていることを考えれば、結構、気が合っているのかもしれない

不思議な縁にちがいない


森の中を流れる、薄暗くてひんやりとした川のほとりが、いつものデートの場所だった


「最近になって考えるのさ」


(今さら、なにを考えるの?)


「よく、「悟った」とか、あの世の仕組みとやらを説明する人がいるよね?

若い頃そういう本が好きでよく読んだけどさ


この年になってはっきりと分かったことは

わかったというか、自分で決めたことは

川のこちら側から、対岸の世界について決め付けて

それに縛られて生きることには意味がないというか、傲慢なことのように感じるんだ

あれこれ想像することは楽しいことだけどね」


(どういうことよ?)

「こちら側は、こちら側で生物の本質である「肉体」を背負い、

同時に大きさも無限で限りなく、小ささも無限地獄で

いかようにも、よろこべる、反対にもがき悩み苦しめる、厄介な「こころ」を背負っているのさ」


(だから?)


「それらに境界をひいて小さく縛るのではなく、無限の可能性にどう向き合うか・・

難しいけど、境界を越えたところになにか貴重な宝が秘められているように感じるのさ」

「その領域に、この世のものとは思えない美しい至宝が用意されているような気がするのさ・・」

(あなた、もう50でしょう?  これから宝探しをするつもり? 危険だわ)


「ニューハーフさ! 今が何をするにも恵まれている状態 

これからは50+何歳でしかない 生縁あるかぎりやってみるさ」

(そうね・・わたしも子育てがやっと終わり、やっと自分を素直に見つめ直し

外へ向かって開かれた状態にあるわ、

今まで頑張ってきた自分のために、自分が欲しがっていることを素直にやれるって

考えただけでワクワクしちゃう)


「その、ワクワクが、前へ動かすエンジンの燃料でありエネルギーさ」

「きみも覚悟を決めて、自分の道を創り宝探しにいくか?」


(不思議なことだけど、こうしてデートしていても少しワクワクするわね?)


「これもエネルギーさ、宝探しのついでに、せっかくだから「恋の底なし沼」にでも落ちてみようか?」


(なんてバカなことを言うの? 息絶えて這い上がれなくなるわよ 笑)  )



もう、とうに日は沈み、月が出ている

ムーンライトシルバーが彼女の長い黒髪を銀色に染めている

とうとうと流れている川の水も銀色に染められて

こうして長いような短いような一日が過ぎていく


                        つづく


************************************************************************

有限である時間の川の流れの中

流されている日々瞬間を「肉体」と「こころ」からメッセージが送信され続ける

「感覚」、「嗅覚」を過去の学習してきた経験にこだわらず常に新鮮な状態で受け入れられるよう保てるように


素晴らしいことは

自分のことを個々が、自分で考え、判断し、自分で決定できるということです


誰の許可もいりません

何の障害もありません

ただ、難儀なだけ


「覚悟」は、自分の道を描くことかな?

大方の人は、よろこび(喜び、悦び、歓び)を求めて限られた時間を運んで生きます

だれでも楽しく楽に生きたいですよね

しかし、こちら側にも天国地獄はありますから




ここをクリックしていただければ嬉しいです(ランキング用ポイント)

       ↓
にほんブログ村 小説ブログ ドキュメンタリー小説へ





記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


ライブコンサートのある風景 05(完)

2008/08/29 12:26
画像


ライブコンサートのある風景 05(完)



STAGE2は3人のブラスが加わり乗りのいい曲が中心になった

会場は盛り上がっている

飲み物や食べ物の売上もまあまあだし

事故もトラブルもなく、何よりも誰一人として席を立って途中で帰る人がいなかったことに

感謝するしかない



ステージでからは軽妙なトークとジョークで会場の笑いを誘っている

いよいよ、ラストの曲 CCRのProud Maryが告げられると、会場から大きなため息がもれた

ロブはたいした男だよ、54になるけどあのパワーと情熱、見習わなくっちゃ


当然のごとくアンコールの嵐

しばらくして一人、また一人とステージに戻ってきた

すると、ロブが、静かに話し出した


(K!楽しんでるか!

みんな!ここにいるKくんはとても音楽が好きで

むかし、ドラムをしていました

特にピンクフロイドが大好きでした・・・

でも、10年前に悲しいことがあってドラムができなくなってしまった)


(Kくん、アンコールの曲はきみのために用意したよ

ぼくはピンクフロイドを歌えないけど

ギターのTとドラムのSがピンクフロイドの曲をやってくれるよ

そのあとは、ぼくの歌を聞いてね)


ピンクフロイドの乗りのいい演奏が終わったあと

ロブとドラムのTが舞台から降りてきてK君のところにいって抱きしめて

ドラムのスティックをプレゼントしたのでした

K君の手にしっかりとスティックを握らせて


そのとき、K君の頬が明るく輝き

スティックを持った手が上に少し持ち上がって

動いたように見えた


後から聞いた話だけど、K君のお母さんにもそのように見えたらしく

また、近くにいた数人も

そのように見えたといっていた


K君のお母さんは涙を流し、立ち上がって頭を下げて

ロブとドラムのTと会場のみんなに礼を言った

会場は一瞬静まり返り、しばらくして大きな拍手がおこった

なかなか鳴り止まない


ロブは会場からさらに、もう一人の難病の女性Aさんにも呼びかけていた

やさしく近づいて、何か語りかけているようだった


アンコール最後の曲はプリティーウーマン

彼はステージの下で、最後は彼女の傍で歌っていた

彼女の顔がきれいだ



これで終わった・・・・・・

ライブは終わった・・・・


バンドのメンバーも、来てくれた会場のみんなも、お店のスタッフも

一つになって

みんなありがとう


K君のお母さんが期待していたような奇跡は起こらなかったのですが・・・・・

みんなの顔が生き生きと輝いているようで笑顔が絶えない

化粧をしておしゃれをして


日常にはない非日常

ハレの日



会場からすべての人を見送った後、店の前のテラスには

企画実行した5名がイスに腰掛けて今日を振り返っていた

これから、お金の清算と、片づけをしなければならない


全員が、とてもすてきなプレゼントをもらったように、いい笑顔をしている


ライブの余韻と、心には温もりがずーと残っていて

ぼくは、会社の人間と友人からの2次会の誘いを全て断り、店を後にしたのは

12時を過ぎていた



帰ったら・・・あの女(ひと)に伝えよう



『ライブコンサートのある風景 − 完−』 



ランキング参加中
クリックしていただければ嬉しいです!

にほんブログ村 小説ブログ ドキュメンタリー小説へ




記事へブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 3


ライブコンサートのある風景 04

2008/06/13 03:02
画像



ライブコンサートのある風景 04




CCR「ProudMary」、「SuzieQ」、

EAGLES「Hotel California」に続き

ROY ORBISON『Pretty Woman』が流れている

ちょっぴり肌寒くなった灰色の季節の中で


いつもならこの店のステージの前で踊っている陽気な女の子たちも

今日はいつもの場所にいない


盛り上がっていないように見えるが、そうじゃない

静かに力強く、それぞれの心に響きわたり

それは伝わって会場全体にこだましている


静かだが熱い

エネルギーを感じる

動の色彩だけがパワーじゃない


ぼくにはわかる


休憩に入った時

前の会社の創立から一緒だったSさんが声をかけてきた

(Pさん、わたし3月に東京に行くのよ、主人の転勤で家族で

それで会社を辞めることになったけど

長い間、お世話になりました

とても楽しかった・・・)



(Blueさん、南半球での仕事で行ったり来たりなんだって?

成功するといいですね・・・)



「ありがとう」

「貧乏暇なしさ・・・Sさん

ここにはいずれ戻ってくるでしょ?

東京には何年間いるの?」



(東京は5年間よ

やっと同居している主人の親とも離れられる

家族だけで暮らせる楽しさと、あと・・・・心配があるとしたら

子供たち都会の学校になじめるかしら・・・・・)



「きみの子だから、きっとだいじょうぶだよ

心配ないよ

ところで今日は楽しんでくれているかな?」



(こんなにも素敵で楽しいとは思わなかった

ギターもキーボードも一流の人たちじゃない?


それに・・・会場の空気が違ってる


誘ってくれてありがとう

こんな企画が現実になるなんて

でも、大変だったでしょう?)



「おれは対して役割はないよ、雑用と用心棒みたいなものかな?」



彼女とは10年前からの付き合い

会社を設立したばかりのぼくは、取引先のバイトをしていた彼女に目をつけていた



よく気が利いていて笑顔がとてもすてきだったので

それと珈琲の淹れ方がとてもよくて美味しくて

それで・・・お願いしてスカウトしたのだった



もちろん変な関係なんかない

ちょっと、噂されたりはしたが・・



前の会社が順調に成長したのも彼女の力によるところが大きい

今日のライブには是非来てもらいたかった・・・



「Sさん、東京でがんばってね

また、このようなライブを企画したら連絡するよ

5年後にね」

(きっとよ、きょうはありがとう

とても楽しいわ

病み付きになりそう 笑) ) 



彼女の後ろ姿を見つめながら

創立当時の苦しかったけど楽しかった頃を思い出していた



『彼女もあれから齢を重ねて、今、何を思っているのだろうか・・・』

『俺も同じように齢を重ねて

今までのキャリアとはまったく無縁の、この事業にすべてを賭けて・・・

果たしてその先に観えるのは天国か地獄か・・・

今、そのどちらかの階段を上っているだろうな・・・


『ま、いいさ・・・それで』


波のように押し寄せてくる修羅場を必死で乗り切ろうとするから退屈はないし

乗り切った後の酒は美味いし・・・

なにせ、想いを遮る可能性を閉ざす限界の壁が今はまだ・・・観えてこないから

限りなく自由でいられるさ』



『ま、いいか・・・それで』



今度は、事業の立ち上げからついてきている新しい会社のメンバーが挨拶にきた

(Blueさんにとても似合っていますよ、黒服が立っているみたいでさ 笑))

「お前たちは、お客さんでいいよな、おれは酒を飲みもせず立ちっぱなしだぜ」



(すみません、何か手伝いましょうか?)



「いいよ、気にするな!これはプライベートだから

お前たちにチケットも無理やり買わした事だし

お楽しみいただいてますでしょうか?お客様!」

(・・・なにか気味悪いですよ・・・でも

今日のライブは最高ですよ、凄いバンドじゃないですか)



「だったら、すまない・・・

ちょっと代わりにここで立っていてくれないか?

売上金の入ったバッグから目を離すなよ!


ちょっと珈琲とタバコを入れてくる」



いつものミニ缶の微糖をちびちびと飲みながら

いつものSHORT HOPEを一本取り出して体に深く吸い入れる


『短い希望・・・か』




ランキング参加中
クリックしていただければ嬉しいです!


にほんブログ村 小説ブログ ドキュメンタリー小説へ
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


ライブコンサートのある風景 03

2008/06/04 00:13
画像



ライブコンサートのある風景 03


Part 3


ポケットから携帯を取り出し時計を見ると、開演15分前

この日の席は、もうすでに8割方埋まってきていた


僕は会場と受付とを行き来して落ち着かない

もう一人・・・だけ

どうしても来て欲しい人

空席のRESERVEDとカードがかけられている席に座る予定の女性

その女性の到着ばかりを気にしていた


会場を見渡していると介護関係の友人が声をかけてきた

『Blueさんよ、杖をついている人たちや車椅子の人たち以外は

みんな普通に見えるだろう?』


「ああ、みんなおしゃれをして楽しそうだね」

『あの女の人は、人生で残された時間があまりないんだ・・・・・・』

「え!あんなにきれいで生き生きとした人が?」


『それと・・・あの男性は・・・実は音が聞こえないのさ・・・

でも、昔、音が聞こえたときの記憶があるので

音を映像で感じとって聴けるんだって・・・・

今日の日は・・とても楽しみにしていたらしい・・・』


『Blueさん?あのリザーブされたテーブルには誰が来るんだ?』

「ああ、あの中央のテーブルはね

あなたも知ってるよね?歌手のMさん

あと・・ロブと親しいハードロックバンドのメンバー席らしい

ロブからキープ゚しておくように頼まれているのさ」


『今日はなにか・・・なんていうか・・・空気が違うよね、張りつめているようだね・・・』

「そうだね、空気が違っている

それに・・透明で気高い空間だね


おれはそんな空間が似合うような人間じゃないが

その空間に仲間に加えてもらってありがたいと思っている

俺ができることはそんなにないのだけど・・・


またしても縁をいただいた

これも・・・あのお方の計らいなのかもしれない・・・」

『?あのお方って・・・誰なんだ?』

「おれだけの秘密さ・・・・・」



まだ来ない・・・・どうしたのだろう

今日のライブで

いちばん気を配り見守ってあげなくてはいけない人


開演の8時は3分ほど過ぎている

今日に限り、いつもは閉じられているライブハウスの入口のドアは

オープンにしてある


オープニングのビートルズメドレーが

ライブ会場から一方通行の店の前の通りに流れ出している

その音は、だんだんと広がっていって

しだいに道行く人たちの足を止めてしまっている


18,19くらいの女の子たちの群れが、僕にたずねてくる

『あのう・・・貸し切ですか?予約制なのですか?今からでも入れますか?』

「今日のライブは全席指定となっていて席がありません、申し訳ありませんが」

僕は、申し訳なさそうにこう答えながら、その対応に追われていたとき


ちょうどジョンレノンのイマジンが流れているときだった

一台の乗用車が店の前に到着し

二人の女性が助手席の女性のために用意された車椅子を

後ろのトランクから取り出していた

すらりとした美しい女性でした


彼女のことは事前に説明を受けていたのですが

数年前に突然発病し筋力が萎縮し機能が低下していく病気らしい

助手席から車椅子には自力で立って自然に乗り移っていた


誰が見ても、背中に機械を背負っていて

スカーフに隠されている喉までパイプガ張り巡らされているようには見えない


ほんの何秒かだけは動けるらしい

それを過ぎると動けなくなってしまう


背中の機械はそのためにあって

その背中の機械から常に酸素を摂り入れながら彼女は生きている

医療スタッフが気にしなければいけないのも彼女の状態でした


日常の彼女の姿を知っているスタッフの一人が僕に言った

『見違えるようだわ、彼女・・・・

とてもきれい  

表情もとてもきれい

その服もとても似合っていてすてき・・・』

僕も体中の感覚でそう感じたのだった

「本当だ・・・・輝いている、光を感じる・・・気高い・・・」


今日の主役の一人が来てくれた

僕はうれしくて、うれしくてどうしようもなくなっていた


生きるってことはこんなにも残酷で・・・

たいへんで・・・

美しいものなのか・・・


彼女たちを、RESERVEDと書かれたプレートの席まで案内して

ぼくは、ショートホープを吸いにビルの暗闇を探して隠れてしまった

一本吸い終わる3分間だけ時間をください

そしたら、落ち着けるから

がんばれるから・・・




クリックしていただければ嬉しいです!


にほんブログ村 小説ブログ ドキュメンタリー小説へ








記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


続きを見る

トップへ

月別リンク